かほる子です
かつては真っ白な生地に
鮮やかな赤い花柄だった手縫いの浴衣
和裁の得意な祖母が
私が赤ちゃんの頃から
毎年浴衣を縫ってくれていました
きっと毎年毎年心を込めて
縫ってくれていたと思います
なのに、私は
中学から高校にかけて遅い反抗期で
祖母が選んだ生地の柄が気に入らないと
高1の夏、暴言を吐いて受け取りませんでした
その時祖母は優しく
「じゃあこの箪笥にしまっておくからね」
「おばあちゃんが死んだらこの箪笥を見てね」
と言っていました
その年、祖母は病気で寝たきりの状態になり
10年ほど病院に入院したまま亡くなりました
その頃私は東京で働いてたので
お見舞いも年に数回しか行きませんでした
痴呆も発症していた祖母は
会いに行っても私の名前も顔も分からず
すぐに帰って来てしまっていました
私の事が分からないなんて、と
自分を哀れむばかりでした
人が病気になるという事
人が死ぬという事
何もわかっていませんでした
祖母が亡くなり
形見分けで10年ぶりに手にした浴衣
新品なのにところどころに黄シミがついていて
祖母が一針一針縫ってくれていた時の
たくさん触った跡じゃないかと思うと
泣けて泣けて
これだけは私の最期の時まで
持っていたいと思います